塗った漆を乾かすための「ムロ」を作ります
説明:
(1)まず、塗った物が十分入るくらいの木箱を用意します。
(2)次に、内部を水で濡らします。霧吹きでシュッシュッとすればOKです。
木箱の底に濡れた雑巾を敷いておけば、なお良いです♪
※もし、木箱がなければダンボールでも可!
ワンポイントアドバイス:
漆は空気中の水分を取り込みながら硬化します。
素地を整える(お椀、お皿、その他なんでも…)
説明:
(1)塗りたいものを用意します。
(2)まず、粗目のサンドペーパー(100番~200番)で研ぎます。
(3)次に、中目のサンドペーパー(400番~600番)で研ぎます。
ワンポイントアドバイス:
素地は一見キレイに見えますが、実はけっこう荒れています。
ここで整えておかないと、漆が浸み込んだ際、表面がケバ立ち、色ムラや目ハジキの原因に…。
素地を固める(さぁ、漆の出番です! )
説明:
(1)生漆を少しテレピンで薄めます(10%~30%くらい)。
(2)これを刷毛などで塗って、素地に十分吸い込ませます。
(3)ムロに入れて乾かします。
(4)ムロでの放置時間は、最低1昼夜!できれば数日入れておきたいものですね。
ワンポイントアドバイス:
素地の吸水性を防いで、次の下地塗に備えるためのものです。
コクソをする(漆に色々まぜて粘土のように。それで穴埋めしよう!)
説明:
(1)板の接合部分は丸刃などで2~3ミリ彫ります。
(2)(1)で彫った部分、またキズや割れがある部分に「コクソ」を埋め込みます。
(3)自然乾燥させます。
(4)乾燥すると多少ヤセがでます。低いところができていたら、再度コクソをつけます。
(5)数日して十分乾いたら、余分な部分を小刀などでゴリゴリと削り取り、粗目のサンドペーパーで平らにします。
ワンポイントアドバイス:
木の継ぎ目をなくしたり、素地のキズや割れを埋めたりする作業です。
木が接いである部分を、なぜわざわざ彫って埋めるなどといった面倒なことをするの?と思うかもしれませんが、これを省いてしまうと塗り終わった表面に継ぎ目が映るなど、何かと問題が出たりするのです。
※コクソの作り方
小麦粉を炊いて糊を作る→それを水で練る→生漆を加える→さらに練る→麻を細かくしたものと木粉を入れて、またまた練ってできあがり♪
麦を炊いて作った糊10 生漆10 麻など1 木粉5
上記のコクソの割合は漆器の産地によって異なります。あくまで参考です。
布着せ、紙着せ(麻、綿、紙を貼って素地を丈夫にしよう!)
説明:
(1)定盤の上に平らに糊漆をひきます。
(2)その上に麻をのせます。
(3)もう一度「糊漆(のりうるし)」をヘラでしごくようにのせ、麻を挟みます。
(4)素地の丈夫にしたい部分に貼ります。
(5)刷毛やヘラで押さえ込むように、よく素地に密着させます。
(6)自然乾燥させます。
ワンポイントアドバイス:
お椀などでしたら、口をつけるところや底の部分などは特に必要です。
※糊漆の作り方
上新粉に水を少なめに入れて煮る→漆を加える→よく練る
布を貼る時は 糊10 生漆10
紙を貼る時は 糊10 生漆5
布目揃え(キレイにしよう!)
説明:
(1)布着せをすると、シワや布の重なりや余計な部分が出てくるので、十分乾かしてから小刀で削ったり、粗い砥石やペーパーで研いだりしてキレイにします。
布目摺り(さらにキレイにしよう!)
説明:
(1)布目揃えをすると、ところどころ布の地色が出てしまうので、錆(さび)を布目の縦横にヘラで摺りつけます。
(2)自然乾燥させます(できれば約1週間)。
ワンポイントアドバイス:
布目揃えを補う作業です。
※錆の作り方
砥之粉(とのこ)を水で練る→生漆を加える→よく練る
砥之粉10 水5 生漆5
地付け(地で素地をさらに覆っちゃおう!)
説明:
・地(じ)をヘラで全体にまんべんなくつけます。
・自然乾燥させます。
ワンポイントアドバイス:
ヤセを防ぎ、素地をさらに強くするための作業です。この工程を2回やるとさらによくなります。
*地の作り方
地之粉(じのこ)に水を加える→よく練る→漆を加える→よく練る
地之粉10 水4 漆5
(面をキレイにしよう!)
説明:
(1)布目揃えの時の空研ぎとは違い、今回は水研ぎです。金剛砥石で水をつけながら入念に研いでいきます。
(2)研ぎ泥はキレイにふき取ります。
ワンポイントアドバイス:
次の工程に備えます。
地固め(生漆を浸み込ませよう!)
説明:
(1)生漆をムラなく摺り込みます。
(2)ムロに入れます。
ワンポイントアドバイス:
生漆を浸み込ませてさらに素地を強くします。
(地より細かい砥之粉でさらに覆いましょう!)
説明:
(1)下錆をヘラで全体にまんべんなくつけます。
(2)自然乾燥させます。
ワンポイントアドバイス:
この工程は下地層を厚くするのが目的ではなく、細密にするために行います。
※錆の作り方
砥之粉に水を加える→よく練る→漆を加える→よく練る
砥之粉10 水5 漆5
錆研ぎ(更に面をキレイに)
説明:
(1)クリスタルの400番~600番で研ぎます。
(2)自然乾燥させます。
上錆(もう一度、繰り返しましょう!)
説明:
(1)上錆をヘラで全体にまんべんなくつけます。
(2)自然乾燥させます。
ワンポイントアドバイス:
下錆と同じ内容ですが、2回することがポイントです。
※錆の作り方
砥之粉に水を加える→よく練る→漆を加える→よく練る
砥之粉10 水5 漆5
中塗り(ついに漆の塗り工程です!)
説明:
(1)漉紙を3~10枚重ねて中塗り漆を漉します。
(2)払い刷毛やタッククロスで今から塗る面をキレイに掃除します。
(3)漉した漆を刷毛で塗ります。
(4)ムロに入れて乾かします。
ワンポイントアドバイス:
キレイな上塗りを実現するための大事な作業です。
研ぎ(塗った面を荒らします)
説明:
(1)スルガ炭もしくは砥石・耐水ペーパーの600番~800番くらいで水研ぎします。
(2)だいたい中塗の塗面の艶が消えるくらい平らに研ぎます。
ワンポイントアドバイス:
研ぐことにより多少の凸凹を作り、次の上塗り漆の密着をよくします。
上塗り(さぁ、最終工程です!!)
説明:
(1)漉紙を3~10枚重ねて、上塗り漆を漉します。
(2)払い刷毛やタッククロスで、今から塗る面をキレイに掃除します。
(3)漉した漆を刷毛で塗ります。
(4)上塗りが終わり、刷毛目がやや落ち着いてきたら、蒔絵筆・針スピナール・鳥の羽根などでゴミを取り除きます。
(5)ムロに入れて乾かしたら…。
完成!!
ここからさらに呂色(ロイロ)とよばれる工程もありますが、上塗りの時に使う漆とは別のものになります。
ワンポイントアドバイス:
・塗る時は埃や静電気がたたない格好で!
・部屋の空気がなるべく動かないように!
・とにかく塵埃が塗面につかないように!